東冨田の家A
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コンセプト
住まい手が計画地に選んだ場所は、実家の敷地内にある茶畑。
その場所は、東に時にカワセミが訪れる小川が流れ、岸辺には桜並木があるなんとものどかなロケーションでの計画となった。勿論、計画においてその桜並木を景色の一部として採り入れることは、住まい手の要望云々以前に設計者としての役目であることは明白であった。
住まい手のご主人様からは、古民家の雰囲気を再現しつつ、大きな吹抜を持ち力を抜いて生活できる住まい。そして、奥様からは主婦の動線を考慮した使い勝手の良く造り込みし過ぎない住まい。というそれぞれ大きな課題を頂いた。
古きを愛する住まい手に答えるべく、材料は地元天竜材に拘り、一部使用した野物材には現代では珍しい「チョウナ」や「ヤリガンナ」を使用した仕上げを施しより味わい深い表情を創り上げた。また、間取りに関しては、風と視線が南北に抜けるように空間を配し、その先には桜を臨む開口部を切った。動線に関しても、奥様の忙しい朝の時間を最小限の動線で完結するような提案と間取りを提供できたと思っている。壁の漆喰仕上げは、本人で行うという住まい手の強い要望により中塗りで完了したこの住まいは、「造り込み過ぎない」という言葉に表されているように生活と共に仕上げがされ、家具が作られ住まい手の年齢と共に完成型に近づいていくのだと思う。
そして、外部に施された板張りの経年変化と共に、周囲の田園風景・桜並木・小川に溶け込み一体化してくれるであろう。なにか、この桜並木を通る楽しみがまたひとつ増えた気がする。