計画のきっかけは、当時住まわれていたアパートにポスティングした完成見学会のチラシを目にしたことであった。それまで全く住まいの事など考えていなかったにもかかわらず、チラシに掲載された「友田の家」の写真に心が動き来場、体感して即建築を決められたというまさに閃きが生んだ縁である。当然建設用地もなく土地探しからのスタートとなり、いくつかの候補地に同行しながら検討を重ね、ご両親との同居など将来にわたっての住まい方なども視野に入れ、私が考えていたよりも広くゆとりのある土地に決定した。住まい手の閃きは単なる思いつきとは違い、ご自身の感性を根拠としたナチュラルな強さがあった。
計画が始まると、とにかく整理整頓上手な奥様の収納への拘りは際立っていた。収納計画を聞き取りプラン造りをさせて頂いたことは勿論だが、提案後は、その与えられた各部の収納スペースに数cm単位で収めるものを計画されていた。しかも、ご自身で起こした展開図付であったことには驚かされた。
主人は・・・というとやはりこちらも負けず劣らず。ご自分の趣味や仕事をするスペースには強い拘りを持っていた。とは言え、概略が決まってしまえば「後はお任せで!」と、最初に感じていただいた閃きを信じ委ねてくださった。
完成時には、「素人があれやこれや考えるより、やはりプロにお任せしてよかった。」と最高の褒め言葉を頂いた事により、私の肩の荷が下りたような思いだった。住まい手と私の感性が通じ合い生まれた住まいであると言える。
既に住み始めて数年経過するこの住まいは、家族それぞれの感性が静かに、そして確かに息づき新築時以上に深みを増して、現在も常に美しく佇んでいる。