現代における「二世帯住宅」とはなんだろうか?
一昔前の二世帯住宅と言えば、一つ屋根の下に親世帯と子世帯が同居するものの
玄関や台所を含む水周りがそれぞれの世帯にあり、基本的には別々の生活と営んではいるが
建物内の一部で行き来ができ、お互いが適度な距離をもって暮していたスタイルであったと思います。
しかし、そんな「一昔前の二世帯住宅」は、現代では全くと言って良いほど
存在しなくなったのではないでしょうか?
実家を継ぐであろう筈だった子世帯は、利便性の問題や同居への不安を理由に
離れた土地に新居を構え、核家族で生活する事が一般的になっています。
また、親世帯側からみても子世帯との同居への不安や自分達の生活スタイル維持の為、
同居を望まなくなってきているのも事実。
そんな現代で起こっている建築業界とは切り離せない社会的問題。
そして、これからの「二世帯住宅」の在り方を私なりに考えてみました。
先ずは、核家族が増えたことによる「空き家問題」。
親世帯がこの世を去り、相続を余儀なくされた子世帯だが、
既に新たな土地で新居を構える者にとって、管理も利用も出来ない実家は放置空き家となり、
一気に老朽化が進み、建物としての存在意義を無くしてしまうどころか、
撤去しようにも高額な解体費用がかかるため、迷惑な存在として扱われている事が殆どです。
実際に放置した空き家は、雑草や木々が生い茂り、獣の住処と化したり、
放火や空き巣などの犯罪被害に遭うリスクが高い為、近隣にとっても迷惑な存在となっています。
人が生活しなくなった住まいは、毎日の空気の動きが全く無い為、
我々が思っている以上に老朽化の速度は速く、月に1~2回空気の入れ替えをすれば
何とかなる程度のものでは到底ない事を認識しなければならないのです。
では、今更「一昔前の二世帯住宅」に建て替えをしましょうとか、
もっと昔の様に互いに我慢しながらでも同居をしましょうなどというつもりもありません。
無論、それが出来るのであれば、社会的観点からすると「Best」だと思いますが、
そんな簡単な問題でもない事は百も承知です。
以下は、これから実家の両親との同居をせずに住まいを持とうとお思いの方に向けた私の想いです。
大きくは、自分達の老後生活や地球環境までも考えた家づくりをして欲しいということです。
例えば…
①中古住宅を購入して更地にして建替える。
②中古住宅をリノベーションして購入する。
③いずれ実家に戻ることを想定して最小限の住まいにする。
④子供が自立する年齢まで賃貸住宅等で暮らす。
⑤実家を相続する時期になるまで賃貸住宅等で暮らす。
どうしても自分達の仕事の事や子供の教育、建築コストばかりに目が行きがちですが、
一呼吸おいてもっと視野を広げると色々な事が見えてくるはずです。
例にあげた①~②は、空き家問題が深刻な現在でも進む、過度な住宅地造成を抑える為、
土地や建物の再利用を踏まえれば地球貢献にも寄与します。
③は、どうしても利便性の良い場所で新しい住まいに暮らしたいのであれば、
子供が独立した事を想定してなるべく合理的な住まいにまとめる事で、
自分達にとっても地球にとっても将来への負担を減らすという考え方です。
④は、子供優先ではなく夫婦優先という考え方です。
子供と同じ屋根の下で暮らす時間は、子供が独立した後に夫婦だけで暮らす時間と
比べると極端に短いことが殆どです。
自分達の将来をより充実した住まいで過ごすことが出来るように時期を考える事で
お財布にも地球にもやさしい住まいづくりが出来そうです。
⑤も④に近い考え方ですが、④に比べ存在する建物を利用とする一歩踏み込んだ考え方です。
遅かれ早かれ来るであろう相続問題にあらかじめ用意しておかない事で用意するという事です。
上記は、私の中の考えの一端ではありますが、現実的に同居の難しい現代での「二世帯住宅」とは、
将来的に自分達が困らないように、空き家問題や環境問題へ寄与する思考を持つことから
生まれてくるのではないかと私は思っており、そうした方たちが増えてくれることを切に願います。