採光というと、
皆さん「明るい家」「南向き」「大きな窓」といった事を連想されるでしょう。
しかし、採光を単なる“明るさの確保”として考える設計士は少ない事でしょう。
光は量ではなく、「質」です。
どれだけ入るかよりも、どこから、どのように、どの時間帯に入るのか。
それによって、住まいの印象も、暮らし方も、まったく違ったものになると思います。
朝、柔らかい光が差し込む場所。
昼、空の明るさだけが静かに伝わる場所。
夕方、光が伸びて一日の終わりを知らせる場所。
採光とは、住まいに時間の流れをつくる行為だと私は考えています。

光は、空間を区切らなくても、その場所の性格を自ずと決めてくれます。
壁や建具で仕切らなくても、光の強さや方向、反射する素材によって、
落ち着く場所と、動きのある場所は生まれてきます。
これは図面には描きにくいものですが、実際の暮らしにおいては、とても大切な要素です。
数字で表される広さよりも、人が「そこに居たい」と感じる理由の多くは、
光がつくっているとすら感じます。

また、採光は外部との関係を住まいに持ち込みます。
景色が見えるかどうかよりも、
空の明るさ、天候の変化、季節の気配が光として室内に伝わること。
それだけで、住まいは外と切り離された箱ではなくなります。
必ずしも大きな開口が必要なわけではありません。
見えなくても、感じられる。
そんな光の入り方こそが、住まいの豊かさの一つだと思っています。
明るすぎる住まいが、必ずしも心地よいとは限りません。
均一に照らされた空間は、便利である一方で、人の感覚が鈍くなることが多々あります。
少し陰があること。
時間によって表情が変わること。
その“揺らぎ”があるからこそ、住まいは人に寄り添う存在になるはずです。

採光とは、住まいに光を入れることではなく、
暮らしにリズムと感覚、云わば感性を与えること。
設計の中で、その光がどんな一日をつくるのかを想像しながら、
住まいをかたちにしていきたいと考えています。
