住まいを考えるとき、間取りや性能、設備については、多くの時間をかけて検討されます。
一方で、庭や植栽については、最後に考えられることが少なくありません。
「住み始めてからでも良い。」そう考えられることもあります。
しかし私は、庭も住まいを構成する大切な一部だと思っています。
植栽は、住まいを彩るためだけのものではありません。
夏には木陰をつくり、冬には葉を落とし、やわらかな光を室内へ届ける。
風が吹けば葉が揺れ、雨が降れば土が潤い、季節とともに表情を変えていきます。
その移ろいが、住まいの中へ自然と入り込み、暮らしに時間の流れを与えてくれます。

また、植栽には、住まいと外部を緩やかにつなぐ役割があります。
塀や壁だけで囲まれた住まいは、境界が少し強く感じられることがあります。
そこに一本の木があるだけで、その境界はやわらぎます。
視線を遮るだけではなく、光を受け止め、風を和らげ、住まいと街との間に、
心地良い距離感を生み出してくれます。
私は、庭とは景色をつくるものではなく、自然の気配を住まいへ届けるものだと思っています。
・朝日に照らされる葉の揺らぎ。
・窓を開けたときに感じる、木々を通り抜けた風。
・雨上がりの土の匂い。
・季節ごとに色付く葉や、芽吹きの小さな変化。
そうした何気ない自然の気配が、暮らしの中に季節を運び、住まいを豊かなものにしてくれます。

近年は、住まいそのものの性能が高まり、室内環境は快適になってきました。
もちろん、それはとても大切なことです。
しかし一方で、外との関わりが少なくなり、季節を感じる機会も減っているように感じます。
住まいとは、外と切り離された空間ではなく、
自然と緩やかにつながりながら、暮らしていく場所でもあるはずです。
そのつながりを、最も身近に感じさせてくれるのが、庭という存在なのかもしれません。

庭とは、住まいの外にあるものではなく、住まいの環境を整えるもの。
そして植栽とは、木を植えることではなく、光や風、季節の気配を暮らしの中へ届けること。
私は、そんな庭のあり方を大切にしながら、住まいを考えていきたいと思っています。
